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ミディの放浪日記~閑話4 雨の日と月曜日は -looking for the rain- (オリジナル)
作者:義歯

紹介メッセージ:
 小さな女の子が紡ぐ小さなファンタジー物語。

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閑話4 雨の日と月曜日は




「すっげー雨だな…スコールかよ」

俺達3人が宿に着くなり、いきなり雨が降りだしたのだ。
しかも豪雨。ていうか滝壷。

窓から外を見ると、通りをはさんだ向こう側の建物が見えないほどの雨。

「なあフィオ、エリアス。何なんだこの雨?」

鶏肉を頬張っているフィオが答える。

「もぐもぐもぐもぐ」

「分かんねー」

「むぐむぐむぐ」

「変わんねー(;´Д`)」

「フィオ、おぎょーぎ悪いよぅ」

「…(´・ω・`)」

子供に言われたら立場も何もない。

「えっと…この辺はね、たまにこういう通り雨があるの」

「通り雨…これが?」

怪訝な表情でイリスが聞き返す。

「うん、通り雨。だいじょぶだよ、一晩で止むから」

…マジか?

「時期を考えると雨の降る時期だな」

コーヒー片手にエリアスが言う。

「そういう季節があるわけか」

「そうだ」

俺達はちょうどそこに当たっちまった、ってわけね…。

「多少、雨音が気になるかも知れないがそれ以外は問題はないだろう。
出発にも差し支えはないはずだ」

でも時期だって事はまた明日も降る可能性もあるってことか。
2日くらい休んでいくつもりだったけど、明日晴れてたらさっさと出発した方がよさそうだな。


***




「とりあえず2部屋取ったけど」

フィオが部屋の前に来て言う。

「ベッドが2つと3つ。部屋割りどうするの?」

どうするって。

「カイとイリスといっしょがいいー」

ミディが自己主張する。

「え…じゃ、じゃあボク、エリアスと相部屋?」

「いいんじゃねぇの、別に?」

「………………」

で、結果。

「…なぁエリアス、お前本当は残念だったんじゃねぇの?」

「何がだ?」

「フィオと相部屋の方がよかったんじゃねぇの、って聞いてんの」

「…何故だ?」

ぐは、こいつ分かってねぇ。

「俺としてはイリスミディと相部屋でよかったんだけどな」

「この先の事を検討できるからか?」

「そう言うこと。まぁ俺が向こうに出向けばいいんだけどよ…。
つーわけで行って来るわ」

「ああ」

バタン。

-聴覚集中…コンセントレート開始-

『おーい、入るぞー…って』

『えっ…ちょっ…!?』

『えー…あー、その、何だ…』

『…ノックくらいしてよバカーーっ!!』

『…すんませんっ!』

-コンセントレート終了-

「…はぁ。」

失意のまま俺は部屋に戻ってきた。

「ふ…馬鹿め。」

「何で知ってんだYO!!」


***





-真夜中-

「…むう、最近トイレが近くて困る」

距離は近い方がいいんだが回数が頻繁だと不安になる。
…まさか歳か? 俺はそんなの信じねぇぞ。

部屋を出ると、外での雨音が一層強く聞こえてくる。
窓も割れそうな勢いだ。

「明日…道が川になってるなんてことはないよな…?」

半ば本気でそんな事を考えながら廊下を歩いていると。

キシ…キシ…。

向こうからも誰かが歩いてくる音が聞こえた。
闇の中にぼんやりとシルエットが見える。
長い髪、身長は高め…。

「あ、イリスか」

「きゃぁっ!!」

「な!? 俺なんかしたか!?」

突然叫ばれ、あたふた。

「あ…な、何だ…。もう、おどかさないでよ…」

…それはこっちのセリフだ。

「あなたもご用事?」

「ああ、近くてな。冷えたかな?」

「お歳じゃない?」

「…俺は信じねぇぞ…」

「や、やだ。冗談だってば…泣かなくてもいいじゃない」

とその時。

ぴかっ。

「お、光った」

「…う」

空ではごく近いところで雷の音が響く。

「随分近いんじゃねぇか? なあ、イリ…」

「な、なななななに?」

「…へ? お前まさか」

ぴかっ!

「きゃーーーーーーっ!」

がばっ!

「どあっ!」

「い、いやっ、やだやだやだっ、怖いぃっ」

俺に抱きついてガタガタ震えているイリス。

「おおおおお落ち着けっ。怖いのは分かったから落ち着け、手を離せって!」

ていうか俺も落ち着けっ!

「う、うぅぅぅぅ…」

ようやく手を離したイリス。

「…じゃあ俺はこれで」

「やっ、ちょっ、待ってよ~!」

「…あのなぁ。ついて来るなよ」

「だ、だって…」

「俺これからトイレに行くんだけど」

「え…う、うぅ…ぐすっ」

…泣いてるし。

「分かったよ、ほら。部屋まで行こうぜ」

「うぅ、うん…」

泣きながら歩くイリスの手を取り廊下を進む。
この光景って端から見ると、絶対俺が悪者だよな…。

「しかし意外だったぜ…イリスって雷苦手だったのな」

「ダメなのよ、あれだけはどうしてもダメなの…」

「何でまた。俺はあの音聞くと気分いいけどな」

「あの音が嫌なのよっ…! あの音が聞こえるともうっ…うぅぅ」

難儀だな。

「ほれ、部屋着いたぞ」

「うん…ありがと…ぐすっ」

「だから泣くなっつーの…布団被って寝てろ」

「うん、そうする…おやすみなさい」

「へいへい」


***





ようやく用を足した俺は自分の部屋に戻ろうと

「キュー」

…した矢先、目の前には跳びはねる毛玉が。

「どうした毛玉。ミディと寝てるんじゃなかったのか?」

「キュっ」

がぶ。

痛い。

「ほほ~~~お…いきなり反抗的なことしてくれるじゃねぇか毛玉」

しかもいつもと違って噛み付いたまま離さない。

「…お前まさかこのまま部屋に連れてけとか言うんじゃねぇだろうな?」

「キュ、キュ」

噛み付いたまま頷くような素振りをする毛玉。

「そうかそうか、部屋まで連れて行ってほしいのか」

ここで俺は表情を一変させる。

「だったら望み通りにしてやるよッ!」

「キュ!?」

俺は大きく振りかぶる。

「痛いの痛いのー、」

そして全力で腕を振り下ろした。

「飛んでけッ、こんにゃろーーーーーッ!!」

ぶん。

「キューーーーーーーーーー………」

吹っ飛ばされた毛玉は廊下の奥の闇に消えていった。

「お星様になれ~っ」

…さて俺も部屋に戻るか。


***





適度な運動もしたし、朝までもう一眠りしようと思い、俺はベッドに入った。

『むぎゅ』

「…。」

出た。

『ふぇー』

…なんでベッドの中から声がするんだ。

「ミディ~出といで~」

呪術師っぽく呼びかけるとミディは布団からひょっこり顔を出した。

「ふぇっ」

「…ふぇっ、じゃない。何で俺のベッドに潜ってるんだ?
それにミディの部屋は隣りだろ?」

「…カミナリこわいんだもん」

何だ、ミディもか。

「じゃあフィオかイリスと一緒に寝るとか」

「イリスはいなかったし、フィオのベッドに入るとけられるの」

け、蹴られる?

「うん…きょくげんまできたえられた こうてつの足でけられるの」

そんな、小○サッカーじゃあるまいし。

「だってゆぅにが飛んで行っちゃったんだもん…」

アレはフィオの仕業だったのか(;´Д`)

「で、俺のベッドに潜ってるわけね…」

「うん」

「でも、もうイリスは部屋に戻ってるからミディも部屋に戻りな」

「やだ」

「…なじぇ?」

「いっしょにねようよ」

「だーからイリスと寝ろっつの」

「カイといっしょだったらこわくないもん」

枕にしがみついているミディ。
動く気は全くないらしい。

「…仕方ねぇな、分かったよ」

「えへ」

笑ってるし。こいつ本当に怖かったのか?

「さて、おやすみ」

「ふにゅ…くぅ…くぅ…」

おまけにもう寝てるし…。

「…。」

明日、エリアスに何て言われるんだろうか。
…すっげぇ不安。




-閑話4 了-

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